緑オリーブ法律事務所ブログ

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 先日、以前ご依頼を受けて作成した公正証書遺言について、内容を変更したいというご相談を受けました。


1.書き換えの可否
 まず、大前提として、自筆証書遺言であっても、公正証書遺言であっても、遺言者がご健在で判断能力がある間は、いつでも何度でも自由に、遺言書を作成したり、作成した遺言書を撤回したり、内容を変更したりできます。


 経験的に申し上げると、遺言書の書き換えを希望されるタイミングは、
・遺言で指定した相手が亡くなった場合(当ブログ2025.9.3.「「予備的遺言」とは?」もご参照ください。)
・遺言作成時と財産の内容が大きく異なってしまった場合(不動産を売却したなど)
・遺言者に推定相続人らに対する心境の変化などがあって、遺産の分け方など内容を変えたくなった場合
が多いと思います。


2.書き換えの方式
 書き換えの方式について、民法上は特に規定はありません。
 ただ、公正証書遺言であればもちろんですが、自筆証書遺言であっても、たとえ変更部分が限られていても、後日の紛争防止の観点から、前回作成した遺言書の一部訂正でなく、新たに全部を書き換えた方がよいでしょう。
 遺言書の効力は、日付の新しいものが優先です。新しい遺言書の冒頭には、「〇年〇月〇日に作成した遺言書はすべて撤回する」と明記しておきましょう。(遺言書の書き方については、当ブログ2016.1.21.「自筆証書遺言と公正証書遺言」等をご参照ください。)


 なお、遺言書の撤回に限ってみれば、遺言書の作成方法と保管方法によって変わってきます。
 1) 自筆証書遺言の場合
  ① 自宅で保管していて作成者の手元にある場合
   遺言書を破棄してしまえば、もう遺言書は存在しないので、撤回したことになります。
  ② 法務局で保管してもらっている場合(当ブログ2020.7.11.「自筆遺言書の保管制度が始まりました」もご参照ください。)
   保管申請の撤回手続をして遺言書の返還を受けた後、破棄するなどします。撤回・返還を受けるためには、保管申請時と同様、法務局にて手続きしていただかなければなりません。
   その後、新しく遺言書を書き換えたなら、あらためて保管申請しておくとよいでしょう。


 2) 公正証書遺言の場合
  公正証書遺言の原本が公証役場に保管されていますので、手元の遺言書(正本・謄本)を破棄しても撤回したことにはなりません。また、たとえ作成者本人からの申し出があっても、公証役場が原本を破棄してくれることもありません。遺言書を撤回するだけであっても、新たに遺言書を書き直す必要があります(たとえば、「撤回したので、民法の規定どおりに相続してほしい」など)。


 遺言書の書き換えについても、是非弁護士にご相談ください。(浜島将周)



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