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侮辱罪厳罰化から3年
2025-08-11 · by blogid · in new! 最新情報, 、 刑事事件, 、 情報問題,

 ネット上の誹謗中傷問題を契機として、2022年に刑法の「侮辱罪」(※)が約120年ぶりに改正され、法定刑が大幅に引き上げられました。(当ブログ2022.6.15.「侮辱罪を厳罰化」参照)
 それから3年が経過し、はたして、同改正がネット上の誹謗中傷問題に対する歯止めとなったか、法務省が制度の検証に乗り出すとの記事がありましたので、ご紹介します。(弁護士ドットコムニュース・8月8日


(※)侮辱罪(刑法231条)
 事実を摘示しないで、不特定または多数の人が見られる中で、他者を侮辱することを内容とする犯罪です。口頭、文書の方法を問いません。
 公然と人をおとしめる行為を対象とし、具体的な事実を示さない点で名誉毀損罪と区別されます。
 改正前の法定刑は拘留(30日未満の自由刑)か科料(1万円未満の財産刑)でしたが、改正法では1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金へと大幅に引き上げられました。


 さて、改正法の施行から3年が経過し、罰金刑の適用は全国で約90件に上るとのことです。これに対して、懲役刑(拘禁刑)が言い渡された事例は無いとのことです。


 たしかに、改正前の1万円未満(科料)に比べれば、30万円以下(罰金)ははるかに重くなりました。しかし、それでも刑事罰としては比較的軽く、抑止効果としてどこまで機能しているかは疑問が残ります。
 他方で、以前の記事でも書きましたが、侮辱罪の厳罰化に対しては、「正当な論評を萎縮させ、表現の自由を脅かすものとして不適切」である(日弁連)などの根強い批判があります。改正法にも、与野党の合意で、施行から3年後、表現の自由を不当に制約していないか検証するとした検討条項の付則が設けられていました。
 法務省には、デジタル時代をふまえた、この表現の自由と被害者保護という大切なふたつの問題について、バランスとれた検証が求められます。(浜島将周)



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